人物ファイル

情熱の寒天伝道師・両角和哉さん

寒天が紡ぐ郷土愛〜ここでしか生まれないもの伝えます〜

茅野駅につながる商業ビル、ベルビア西1Fにある「かんてん茶房きれい」店長

県寒天水産加工業組合、茅野市、茅野商工会議所、諏訪東京理科大学からなる「寒天プロジェクト」の食の商品開発プロジェクトリーダー

また、すわものがたり部というサークルに所属し、諏訪の昔話や伝説を次世代に伝えていく活動も行っている。

ブログ:信州寒天の里やさしい寒天通信

連絡先
E-mail:morozumikazu@gmail.com

無いなら僕がやります!!

僕が寒天料理の専門店を開くきっかけを作ってくれたのは母なんですよ。僕の母は、茅野市で美容室とエステサロンをやってまして、その中で「理想的な体型を維持している人は寒天を普段の食事に取り入れている」ということに気付いたんです。それで、「痩身コース」の食事療法に寒天を取り入れてみたところ、結果がとても良かったらしいんです。
でも、寒天の生産地の茅野には寒天を食べさせる店がない。そこで、元々、調理の仕事をしていたこともあり、ないなら僕がやろうと。寒天という素晴らしいナチュラルフードを色々と活用して、もっと寒天の可能性の深さを追及していきたい、そして、寒天に一番馴染みが深いはずの地元の人達に知って欲しいなと強く想いました。
それから、寒天工場でしばらく修行をし、製造過程の大変さも体で覚えた上で、「かんてん茶房きれい」をオープンしました。

 

アガロペクチンって何?

僕は、よく「角寒天と粉寒天の違いってご存知ですか?」という質問をします。「形が違う(角寒天は棒状、粉寒天は粉状)」という答えは多くの人が知っていますよね。普段から寒天を使う人からは「粉寒天は調理しやすい」という答えも出てきます。スーパーマーケットなどで寒天を買う時、やっぱり、角寒天より粉寒天を買う人の方が多いですよね。それは、生産量にも表れていて、角寒天の生産量が年間200トンに対して、粉寒天は年間1,000トンも生産されてるんです。
角寒天の魅力を伝えたい自分としては、少し複雑ですね。決して、粉寒天が悪いというわけではないんですが、昔ながらの製法と技術でつくられた角寒天が家庭で使われなくなって行くことは非常に残念なことです。それに、粉寒天に比べて角寒天には寒天に含まれるアガロペクチン(注1)という成分が多く含まれ、栄養価が高いんです。
栄養価に差がでるのは製造方法の違いにあるんですが、粉寒天は製造過程の中で強制的に圧力で脱水するため多くのアガロペクチンが流出してしまうんですよ。
注1:アガロペクチンという成分には「摂取した糖質や脂質をくるみ込んで体外に排出する」、「血糖値の急激な上昇を抑える」、「コレステロールを低下させる」といった効果があります。

 

ここでしか生まれないもの

実は、角寒天は諏訪地域でしか作れないんです。角寒天の製造方法を説明しますね。

  1. 原料となる天草などの海藻類を洗浄機に欠けて土砂や貝殻などを取り除く
  2. きれいになった海藻類をきれいな水を使い、釜で煮沸する
  3. ろ過槽でろ過する
  4. 寒天が固まった後、一定のサイズに切りそろえ、昼夜を問わず屋外で干し、極寒の夜間に凍らせ、日中の弱い日差しで解かし、八ヶ岳から吹き降ろす風で乾燥させるという工程を繰り返し、2週間位かけて乾燥をさせていく
    (12月10日前後から2月中旬の間)

こうして、工程を見ていくと非常にシンプルなので、どこでも作れるんじゃないかと思われるかもしれませんが、重要なのは②と④の工程なんです。
諏訪地域の冬はとても厳しく、日中も氷点下が続き、夜になると氷点下10度以下になる日もあります。人にとっては過酷な環境ですが、冬場の低温と八ヶ岳から吹き降りてくる極寒の風が、角寒天製造過程の中ではなくてはならないものになるんです。そして、八ヶ岳からのミネラル豊富な地下水も角寒天の栄養価を高める重要な要素になるんですね。
でも、こうした製造方法で角寒天を作る業者は昔に比べて随分減ってしまいました。寒天処と言われているにもかかわらず、諏訪地域全体で10社くらいしかありません。原因としては、寒天を干す場所が無くなった、環境の変化に伴い良質な海藻が減少した、粉寒天のシェアが拡がったなどと言われています。外的要因もさることながら、僕が心配なのはこのままでは地元の人達に角寒天の良さを忘れ去られてしまうんではないかということなんです。

 

2012年5月寒天プロジェクト始動

このままではダメだという危機感の中、2012年の5月に「寒天プロジェクト(注2)」を発表しました。「茅野地方特産の角寒天の良さをより多くの人に知ってもらおう」と健康に関心の高い中高年世代をターゲットに角寒天を使ったレシピや商品の開発に取り組んでいます。

注2:県寒天水産加工業組合、茅野市、茅野商工会議所、諏訪東京理科大、諏訪中央病院など産学官連携で消費拡大を。両角さんは食の商品開発のプロジェクトリーダーを担う。

 

マジ、泣けたっす

それから、昨年の6月から今年の2月までの約半年間、地元の小学校で寒天の授業をやらせてもらったんですよ。3年生対象だったんですが、みんな僕の話を真剣に聞いてくれて、最後にサプライズパーティーまで開いてくれて、心のこもった寄せ書きまでくれて・・・。感激してしまって、泣いちゃいました。その時にもらった寄せ書きは今もお店に飾ってます。地場産業の角寒天を通じて、「郷土愛」を伝えたいと思って引き受けたことなんですが、逆に僕の「郷土愛」が更に深まりました。
プライベートでは、「すわものがたり部」というサークル活動を通じて、地域の観光ツアーを企画したり、茅野市のガイドさんと諏訪大社をめぐったりもしています。
ところで、「諏訪物語」という本をご存じですか?これは、諏訪地域の昔話や伝承を集めた本なんですが、すごく面白いんです。最近の小学生は知らない子たちが多いようで少しさびしい気がしますね。でも、この本を読み聞かせすると、目を輝かせて聞いてくれるんですよ。やっぱり世代が変わってもおもしろい物語は興味を惹くんですね。これからも、子供たちに郷土の昔話を伝えていきたいと思います。

 

常に新しいことに挑戦したい

2013年の5月から7月にかけては講演などを通じて角寒天のPR活動に更に力を入れる予定です。僕の情熱の源は「常に新しいことに挑戦し続けること」ですね。地域活動を通じて地域を元気にすると自分の活力になる。そうするとそれが自分自身の成長へと繋がって行くんです。地域を元気にしているようで、実は自分が元気をもらってるのかもしれませんが・・・(笑)

  • 子どもたちからの最高の贈り物

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