人物ファイル

八ヶ人(ヤツガット)

個性という付加価値を付けると笑顔が返ってくる 八ヶ人(ヤツガット)

原村、富士見で活動する農業を楽しむ人達の集まり。
現在、メンバーは7、8人。
野菜農家、花農家などそれぞれ志すものは違うが、その中でも個性を出し刺激を与えあっている。
原山荘での集まりのお問い合わせ
sakadachi82@gmail.com

八ヶ人(ヤツガット)と原山荘

八ヶ人は原村、富士見で農業を楽しむ個人農家の集まりである。八ヶ人として農業法人を作ったり、イベントを開催している訳ではなく、それぞれが思い思いのやり方で農業を楽しんでいる。

そして、原村のペンションビレッジ内にある原山荘に月1回ほど集まり、近況報告や情報交換を行っている。この集会にも必ず参加しなければならないというルールはない。自分の状況に合わせて行ける時にだけ参加すれば良い。時には八ヶ人以外の人達の方が多い時もある。真面目な話もあればくだけた話もある。皆で1つの話題で盛り上がる時もあれば、2、3人ずつでバラバラな話で盛り上がっている時もある。

今回の取材は、そんな原山荘での集まりの時にお邪魔して、八ヶ人メンバーである折井さん、町田さん、ノブさん、そして原山荘のオーナーであり映像制作の仕事に携わる高橋さんを中心にお話を伺った。

この場所だからこそできること、自分だからこそできること

~皆さんにとって農業の魅力って何ですか~

折井さん「農業と一言で言ってもみんなそれぞれ取り組み方は違うと思うんですよ。僕の場合は、野菜を作っているんですが、従来のやり方だと作って収穫して農協や市場に出荷するしか方法がなかったと思うんですね。この方法であれば収入は安定するかもしれないけれど消費者との距離が遠い。それでは面白みに欠けるなと思っていて、直売に力を入れています。収入的に不安定な面もあるけれど、自分の作った野菜が、それを食べる消費者に喜んでもらえる場面に遭遇することが一番の面白さですかね。」

ノブさん「僕は花の生産農家です。僕の奥さんが原村の農家の娘なので、婿養子としてこちらに来ました。出身は横浜です。奥さんからは『農家は冬が休みだからいいよ~』って言われて期待してたんですが、ハウスで花を作る農家に休みなんてないんです(゚o゚;;義父の下で修行していた時はサラリーマンと同じで感覚だったりもして正直あまり楽しめなかったけど、独立してやれるようになってからは毎日、ハウスに行くことも苦ではなくなりました。やっぱり、自己責任で最後までやれる仕事って充実感があるじゃないですか。でも、たまには息抜きも必要なので時間を作っては奥さんと旅行に行ったりもしています。自分の頑張り次第で時間を作れるというのも楽しさの一つですかね。」

町田さん「僕はハウスで無農薬の花を作っています。元々サラリーマンをしていたんですが、ある時、農業をやりたいなって思ったんです。最初は松本市の方で考えていたんだけど、エコーラインから眺める空の抜け方を見てとても感動したんです。一目でこの場所に魅了されました。今では、異業種の方々とコラボレーションしながら農業プラスアルファの生活を楽しんでいます。今年もいくつかハウスの中でのイベントをやったり、ハウスの周りでキャンプをしたりして盛り上がりましたよ。」

この3人は農家であるが、それぞれ作っているものも違えば売り方も違っている。しかし、共通点もある。それは、農業をやる前に会社勤めの経験があるということと、そして、何より大きな共通点は『人と人とのコミュニケーションを楽しんでいる』ということである。

選択肢の1つとしての農業

原山荘オーナーの高橋さんと折井さんは共に原村出身で歳も近い。学年で言うと高橋さんが1年先輩になる。

折井さん「慶くん(高橋さん)のことは、小学生の頃、1つ上にいたなという記憶がありますが、大人になるに連れて職業も違うことがあって、接点がなくなっていきました。それが、たまたま町田さんが主催するイベントで慶くんと再び出会って・・・。」

高橋さん「そうですね。幼馴染とIターンでこちらにやって来た人の開催するイベントで再会するって、何か不思議な感じがしましたね。しかし、これも何かの縁ということなんだと思います。その時、八ヶ人の事を聞き、異業種の僕にも何か手伝えることがないかなと考えたんです。それが、この原山荘という場所の提供でした。」

そんな出会いからしばらく経って、高橋さんが東京の友人のオフィスにいた時、たまたま東京の大学に通う学生と出会った。話をしてみると、その女の子は将来原村に住みたいと言う。

高橋さん「それから、東京の学生達との交流が始まったんです。去年の夏には10人くらいの学生が原村にやって来て収穫体験などをしました。この子達は都会生まれ都会育ちの子が多く、田舎と呼べる場所がないんですね。僕らが当たり前に感じている場所が新鮮に映ったらしくとても楽しんでいました。そして、その子達が『原村に恩返しをしたい』と言って、今年は東京の代官山で原村の花を直売してくれました。」

折井さん「今も就職氷河期と言われていますが、農業も就職の選択肢の一つとして考えてもらえると嬉しいですね。僕たちみたいに一旦、会社勤めをしてからでもいい。何かに行き詰った時、自分のやっていることに疑問を感じた時でもいいから、『あの時、原村で体験したことって何か楽しかったな』とフッと頭によぎってくれればいいなと思います。」

学生達だけでなく、脱サラし農業を志す人もいるが、その人達がまず不安に思うことがある。それは、農地、収入、出荷先などである。

折井さん「八ヶ人ではそういう人達のお手伝いもしています。収入に関しては、天候やその人の頑張りに左右されたりもしますが、農地の紹介はできますし、農機具を貸すこともできます。出荷先も紹介できるのでそこから自分でどんどん広げて行って貰えば収入も安定して行くんじゃないかな。農業ってそんなに甘いものじゃないって言われるかもしれないけど、何もかも一人で抱えて悩む必要はないと思うので、僕たちに限らず周りの人と積極的にコミュニケーションを取って友達の輪を広げていけば道は開けると思いますよ。」

八ヶ人の進む道

折井さん「八ヶ人は農業を営む個性の集まりなので、みんなで何かをしようとか、ルールを作って組織をしっかりしようなどといった思いはありません。時には協力して何かイベントをやったりもしますが、あくまでも自由参加だし、それぞれ思う方向で進んでそれがお互いの刺激になればいいと思います。『あいつがあれをやったなら、俺はこれをやろう』的な、良い意味でライバルでもあるかもしれませんね。」

高橋さん「原山荘としては都会と田舎を繋ぐハブ的な場所でありたいですね。単なる人が集まる場所でいい。いろんな個性を持った人が集まって、情報交換があったり、学ぶことがあったり、刺激があったりすればそれだけでこの場所を開放している意味があると思っています。」

  • 八ヶ岳中央農業実績大学校にて

  • 手作りのピザ釜完成!

  • HAMARA FARMで収穫体験

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