人物ファイル

油屋八ヶ岳 石川治子さん

津金で体験「ていねいな暮らし」

東京都出身
2012年山梨県津金にて油屋八ヶ岳をオープン
北杜市須玉町下津金2453
Tel/Fax 0551-47-5200
e-mail  info@aburaya-yatsugatake.jp
http://www.aburaya-yatsugatake.jp/

 

東京の下町で生まれ育ち、親戚もみんなすぐそばの街で暮らしていたと言う石川さん。子供の頃から夏休みに田舎へ行く友人がうらやましかったそうです。子供の頃に夢見たことは大人になっても忘れないもの。就職し、結婚し、子育てを終えようやく自分の時間を持てるようになり、かつての夢がふつふつと湧いて来て、本格的に田舎で暮らそうと思ったのが今から15年前。でも、そんなにすんなりと移住計画は進みませんでした。

友人たちと共に理想の田舎探し旅

「山梨に来るようになったきっかけは、友人夫婦が高根町の高根クラインガルテンに畑を借りていて、そこに遊びに行くようになったからです。初めて訪れたのが15年前で、こんな田舎で暮らせたらいいなと思っていました。それで、私と同じように田舎のない友人夫婦1組と友人の女性写真家1人の男性1人、女性3人プラス私の飼い犬3匹で日本の何処かに自分たちの理想の田舎を探そうということになったんですよ。ワンボックスカーに乗って、最初の年は山陰・山陽、次の年は近畿、その次の年は四国という具合にまわろうよって盛り上がってたんですよね。それで、最初の年の山陰・山陽10日間の旅を楽しく終えたんです。最初は『運転も交代で』って言ってたんですが、運転も私の犬達の朝夕の散歩もほとんど友人のご主人がやってくれたんです。道中、車のトラブルなどもあったりしたんですが、女性達はのんきなものでした。でも、旅から戻ると友人のご主人が『もう、女の人達に振り回されるのは懲り懲りだ!!』って言い出して。だから、あえなく最初の年で、田舎探しの旅は終わりを告げました(笑)」

それから、石川さんは一人で移住の計画を進めていくこととなりました。ドラマ『北の国から』を観て感動し、富良野市役所に電話してみたり、高根町で空き家を探したりしていたのですが、なかなか縁がなく半ば諦めかけていました。しかし、移住計画開始から約10年、2009年8月、ようやく光が見えて来たのです。

「ある時、東京でローカルデザイン研究所のセミナーを受講したんですが、その講師の先生とお話する機会があって津金地域の話になったんです。その時、その先生の『津金なら空き家があるよ』の一言に導かれるような形で・・・。さっそく次の日、津金に向かいました。そして最初に訪れた空き家がここ油屋だったんです。シャッターが閉まっていて、中の様子は見えなかったんですが、『あっ、ここだ』と思って、すぐに持ち主の方に連絡を取ってもらいました。」

シャッターを開けるとそこは・・・

油屋の持ち主の方は現在韮崎に住んでおり、石川さんが借りる以前は、油屋で働いていた番頭さんが後を引き継いで地域のよろず屋を営んでいました。一目で気に入った空き家でしたが、なかなか話が進まず、結局借りたいと言った日から半年以上経過しました。それでも、根気強く待ち続け、ようやく了承してもらい、シャッターを開けて中を見せてもらう日がやってきました。

「シャッターを開けて、しばらく呆然としました。まず、店の中によろず屋で使用していた物が山積みになっていて、奥の座敷が見えない。それをかき分けて中に入って行くと、ありとあらゆる生活用品や洋服、タンス、仏壇に至るまで生活そのまま残っていました。」

不便だからこそ感じるありがたみ

それから、石川さんは時間をかけ、支援を受けながら片付けて行き、2011年11月、念願の移住を果たしました。東京での生活と随分変わり、友人達はいろいろと心配してくれます。

「都会に住んでいると真っ暗な夜って怖いんですよね。近くに人がいない、明かりが見えない、コンビニがない、駅がない。ここは、今まで当たり前にあったものが全然ないんです。だから、友人達は『さびしくないの?』とか『どうやって生活するの』って心配してくれるんです。私も最初は不安だったりしましたが、高根町に田んぼと畑があるから食べるものには困らないし、ニワトリを5匹飼っているからタンパク質もちゃんと採れていますよ。後、電気はなるべく使わないようにしています。テレビと電子レンジもこっちに来る際処分しました。

都会に住んでいる人からすると、ここは不便で不安な場所かもしれません。でも、だからこそ食べるものや人とのつながりがとても貴重なものだと感じるんです。」

自分が口にするものに真剣に向き合う

津金に来るまでは商売をするつもりがなかった石川さん。今では、お店の中には、石川さんが育てたお米や厳選した安全な食材が並んでいます。

「子育てが始まる前後から、自分達が口にするものには関心がありました。私達の世代は東京でもまだ安心な物を食べていましたが、子供や孫の世代になると悪い物が蓄積して昔はなかったアレルギーが発症したりしています。この問題は自分自身が食に対して真剣に向き合わないとなかなか解消しません。だから、油屋八ヶ岳は食を中心とした『ていねいな暮らし』を発信する場でありたいんです。最近では、都会の子供達と地域の若手農家さんが共同で農作物を作って、収穫し、料理をして食べるというプロジェクトにも参加させてもらっています。自分たちが口にするものに真剣に向き合う人達の輪が少しずつでも広がっていってくれればすごくうれしいですね。」
油屋八ヶ岳では今後も、腎不全から食生活の改善によって回復した中国人バイオリニスト劉薇(リュウ・エイ)さんの『雑穀教室』、料理研究家・引頭佐知さんを講師に迎えての『だしとり教室』、地域の安全でおいしい果物を使った『ジャム作り』などの食のワークショップを中心に『ていねいな暮らし』を実践していく予定です。詳しくは、HPならびにフェイスブックページをご確認ください。

  • クラフト作家の方々の作品と石川さんのお米

  • 厳選された安心安全な調味料

  • 先代から受け継いだ鏝絵の看板

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