人物ファイル

特別支援学校 教育相談員 金井なおみさん

特別支援学校 教育相談員は語る!

長野県諏訪養護学校教諭
特別支援教育士SV  学校心理士
これまで特別支援学校、特別支援学級
情緒障害児短期治療施設内学級等にて勤務
特別支援学校で教育相談を6年間専任する
2010年~長野県発達障害者支援対策協議会委員
諏訪郡富士見町在住

発達障がいってなに?

 

「特別支援教育は2007年度から法整備化されました。従来の特殊教育が障がいのある児童生徒が特定の場所で受けていた教育(特殊学級・養護学校)なのに対し、全ての教師が全ての学校・学級で行う教育の事で、発達障がいの支援をしていく教育です。文部科学省の調べでは通常学級で全児童生徒の6.4%(2012年)が発達障がいの子どもだと指摘しています。
さてそこで発達障がいとはどのようなものか簡単に説明します。発達障がいには、自閉症スペクトラム、ADHD、LD、の三つの症状があります。
簡単にこの三つの症状の特徴を説明します。」

■自閉症
社会性に困難、コミュニケーションに困難、こだわりがある。
上記の症状が幼児期にあらわれます。感覚に過敏さ、鈍感さが
あることがあります。自閉症の人たちは想像力を働かせること
や視覚化できないものを理解することが、とても苦手だといわれています。理解されることを一番望んでいる人たちだと思います。
■ADHD
不注意、多動性、衝動性。の特徴がありますがこんなタイプにも分けられます。
混合型・・不注意と多動・衝動性の両方がみられるタイプ。過活動、じっとしていられない、過度なおしゃべり、せっかち。
注意欠陥優位型・・不注意・集中力の欠如だけのタイプ。空想にふけりやすい、気が散りやすい、ぼーとしている。一見、ADHDのタイプに見えないことがあります。
多動・衝動優位型・・多動・衝動性だけのタイプ。乱暴、切れやすい、じっとしていられない・・・
■LD(学習障がい)
基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算するまたは推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態を指すものです。学習障がいはその原因として、中枢神経系に何らかの機能障がいがあると推定されますが、視覚障がい、聴覚障がい、知的障がい、情緒障がいなどの障がいや、環境的な要因が直接の原因となるものではありません。

「いずれも早期発見がとても大事な事なので教師一人一人が注意深く児童・生徒を見守り、対応していく事が必要です。もちろん家庭内においても同様です。」

サヴァン症候群と自閉症

 

「サヴァン症候群とはよくテレビとかでも紹介される特殊な能力のことですね。知的水準は低いのに、ある特定のことについて並外れた知識や能力のある人のことです。サヴァン症候群は自閉症ではないか、という考えもありますが、はっきりしていません。一方、自閉症の人が、並外れた能力を持っていることはよく知られていることです。瞬間的な数の把握や絶対音感など、身近にもそうしたことで優れた能力を持っている人がいますよね。」

トムクルーズも発達障がいだった

 

「1986年『トップガン』の世界的大ヒットでトップスターの仲間入りを果たしたトムクルーズも発達障がいだったと自ら語っています。幼い頃から学習障がい(LD、具体的には、失読症つまり書かれた文字を読む上での障がい)を持ち、自身、障がい者にかかわる映画(『レインマン』)や、この障がいの理解を推奨するための映画(『デイズ・オブ・サンダー』)も製作主演しています。この経験から学習障がい児への支援活動にも取り組んでいます。」

困った人ではなく困っている人なのです

 

「発達障がいという日本ではまだまだ耳慣れない言葉ですが、周囲の理解がとても大切なのです。仕事が長続きしない、社会生活が旨くいかない。それらは本人が一番困っていて、途方に暮れているのです。
またせんだっての東日本大震災の際、避難所生活を余儀なくされても、どうしても大勢の人の中では暮らせなくて、車の中で何日も過ごさざるをえなかった発達障がいの人たちも数多くいるのです。どうか理解して上げて下さい。そしてできるだけ支援に力を貸して下さい。地域コミュ二ティーの助けも大いに必要です。」

この子らを世の光に

 

「最後にパールバックの「母よ嘆くなかれ」という本を紹介します。『大地』を書いたパールバックには障がいのあるお子さんがいて、お子さんの将来について彼女が次のようにある人から言われる場面があるんです。
「お母さん、準備をなさい。中でも、このお子さんがあなたのすべてを吸収してしまうようなことをさせてはなりません。お子さんが幸福に暮らせるところをお探しなさい。そしてそこにお子さんを置いて、あなたはご自分の生活をなさい。」
当時、そうした子どもは家族が、特に親がずっと面倒を見るのが当たり前だと、そうせざるを得ないと思っていた私にとって、全く新しい考え方でした。またこの本の中で、彼女はこのような子どもが通っている、例えば学校のようなところについて、親が注意しなくてはならないこと、親としての責任を次のように言っています。
『一つは、できるだけ頻繁にお子さんの様子を訪ねてみることです。二つ目は、子どもの世話をする人を常に注意することです。その人は、愛情のある生来親切な人であり、しかも子どもを愛し、手を下さないで、子どもたちに好かれながら規律を教えることのできる人でなくてはいけません。ただ、子どもを理解できる人であればよいのです。三つ目は、お子さんが生活している場所の雰囲気が、希望に満ちているどうか、ご覧になることです。』 これは、このまま、教師である私たちへのことばとして受け取れると思います。」

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