人物ファイル

縄文の里で暮らす喜び 浜島ともゑさん

縄文の里で暮らす喜び 浜島ともゑさん

茅野市塚原生まれ
静岡県で助産師をしたのち下諏訪町に
現在エクセレントライフ蓼科に居住

「人生幾つになっても新しいことを知ることは楽しいですね。この施設で毎月2回やっている『縄文文化勉強会』で知ったことがたくさんありました。私達が暮らす八ヶ岳山麓にはたくさんの縄文遺跡があるそうなんです。時々、尖石縄文考古館や井戸尻考古館へ連れていって頂いて、お話を聞いたり当時の人達が作っていたであろう蔓で編んだ籠を作っては楽しい一時を過ごしているんですよ」と笑顔で語って下さった浜島ともゑさん。勉強会や考古館でもらった資料は、毎回きっちりとファイリングしている。この資料がまた、縄文文化勉強会でも役に立つ。

浜島さんが暮らすエクセレントライフ蓼科は、北八ヶ岳の標高約1,400メートルの高原に位置する住宅型有料老人ホームで、信州の四季の変化の美しさを堪能できる素晴らしい環境の中に立地している。もともと、リゾートホテルであったところなので24時間利用できる大浴場や娯楽場、美術館、茶室、そして屋上にはガーデニングスペースなどがあり、充実した余生を送ることができる生活空間である。その中では様々な集まりがあり、季節に応じたレクリエーションを楽しむことができる。縄文文化勉強会もそうした集まりの一つであるが、縄文遺跡が近くにあるからこそできたサークルである。参加するメンバーは皆「こんな近くに縄文遺跡があるなんて知らなかったし、驚きです。その当時の文化を知りたいです。」と口を揃える。

縄文時代は争いがない共生の時代であったと言われる。そのような平和な時代が1万年以上続いたということは日本史的にはもちろん世界史的にも類を見ない。縄文時代早期から前期にかけては狩猟対象の大型乳類の季節による移動に伴っての移動生活であったが、縄文時代中期から後期にかけては竪穴式住居での定住生活へと移り変わっていった。縄文時代中期は八ヶ岳山麓に多くの人が住み、まさにその時代の中心地であったようだ。貨幣はまだ存在せず、他の地域との交易は物々交換であった。八ヶ岳周辺で産出する黒曜石は矢じりの先やナイフとして使用された。霧ヶ峰で産出した黒曜石が遠く離れた場所で発掘されたり、八ヶ岳南麓の矢出川遺跡からは伊豆七島の一つである神津島産の黒曜石が発掘されたことからもわかるように交易の範囲は非常に広いものであった。鹿やイノシシなどを捕らえ、肉を食べ毛皮を衣服として使用し、栗やどんぐり、栃の実などを採取し主食としたようだ。余談ではあるが、栃の実は生のままでは毒性が強く、食用としては長時間の灰汁抜き作業が必要である。縄文時代の人達も時間をかけてアク抜きをしていたのだろうかと考えると身近に感じられる。

宗教観も弥生時代以降のものとは考え方が大きく違う。墓は集落の真ん中に位置し、死の世界とは忌み嫌うものではなく、身近な世界であった。国家に支配される訳ではなく、生活の中心は祭り、すなわち自然の恵みへの感謝、天への祈りであった。アニミズム(生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方)的な思想である。土器にも感謝や祈りの紋様が刻まれ、土偶は精霊すなわち神とも言える何かを現したものであった。縄文早期では手のひらに収まるほど小さく、形状、表情ものっぺりとしたものであったが、縄文中期になると人型に近づき、表現も豊かになっていく。精霊なのか宇宙人なのか、まさしく人型ではあるが人ではない何かである。そして、感謝の気持ちを表したことが伝わってくる造形美がそこには存在する。全くの空想の産物であるとは考えにくい。その時代には人々があたりまえのように人ではない何か神々しいものの存在を認識していたに違いない。そして、その土偶を中心に祭りが執り行われていたのであろう。

土偶と言えば、茅野市には大変貴重な2体の土偶が存在する。1つは国宝「縄文のビーナス」(高さ27㎝、重さ2.14㎏)である。これは、1986年9月に八ヶ岳山麓の長野県茅野市米沢に位置する棚畑遺跡から発掘された大型土偶であり、1995年に国宝指定された。そして、もう1つが2000年に茅野市湖東の中ッ原遺跡から出土した「仮面の女神」(高さ34㎝、重さ2.7㎏)である。この「仮面の女神」は2014年3月に国宝指定が答申された。茅野市の柳平千代一市長は記者会見で「これを追い風に、縄文プロジェクト構想をさらに力強く進めて行きたい」と強調した。縄文プロジェクト構想とは、「八ヶ岳の眺望、明るい空気…。そして、その自然に育まれた類稀なる縄文文化『縄文』の価値を考古学の世界だけにとどめず、私達の生活の中で普遍性を持たせる取り組み。茅野市の『宝』を磨き、育てる取り組み」(『縄文プロジェクト構想』巻頭抜粋)である。茅野市教育委員会では縄文を生かした「人づくり」が動き始めている。市内小中学校の総合的な学習に「縄文科」を新設し、9年間を通じて「縄文」を体系的に学ぶ仕組みを構築していくこととなった。また、茅野市商工会議所も市の縄文プロジェクトと連携した商品を試作したり、催しを企画準備中である。前島さんが所属する縄文勉強会でもその試作品の使い勝手やデザインなどに関しても意見が交わされているが、メンバー内の評判は上々であるそうだ。

八ヶ岳山麓に数多く広がる縄文遺跡。茅野市の尖石遺跡、原村の阿久遺跡、富士見町の井戸尻遺跡、北杜市の酒呑場遺跡、金生遺跡、天神遺跡、神取遺跡などなど。このような遺跡を巡りながら、縄文時代の生活や文化に思いを馳せるということをやってみたくなった。昔も今も八ヶ岳山麓には『他にはない何か』があり、それに魅了されて人々が集まってくる。きっと、自然の恵みに感謝し、共に生きることができる何かが八ヶ岳の周りにはあるに違いない。

 

取材協力
エクセレントライフ蓼科
長野県茅野市北山5513-159
TEL 0266-67-0609  FAX 0266-67-0610
http://www.excellent-life.ecweb.jp

  • 茅野市の縄文プロジェクトと連携した試作品

  • 縄文文化勉強会

  • 茅野市尖石縄文考古館

  • エクセレントライフ蓼科

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