人物ファイル

地域医療だからこそできること 續木照美さん

地域医療だからこそできること

山梨県上野原市生まれ
北杜市国保辺見診療所(北杜市明野町上手1-12)勤務
看護師・糖尿病療養指導師
趣味:スキー(白井塾所属)

ゴールデンウィーク真っ只中。八ヶ岳の緑も日ごとに濃くなり、人も動物も草木も活気に溢れる季節になりました。こんなに楽しい季節を満喫する為にも、自分の健康状態をしっかり把握しなくてはなりません。
續木さんが勤務する辺見診療所は韮崎市の隣、明野町にあります。開設は昭和28年6月。今年で、62年目を迎えます。今回ご紹介する看護師、續木照美さんは平成8年からの勤務なので今年で丸18年となりました。看護師であるとともに糖尿病療養指導師でもある續木さん。今回は糖尿病のことを中心にお話を伺いました。

~糖尿病の人ってどれくらいいるのですか?~

「糖尿病って、自分とは縁遠いって思ってらっしゃる方もいるかもしれませんが、平成24年度の厚生労働省の調査によると、日本の成人の中で『糖尿病が強く疑われる人』が950万人、『糖尿病の可能性を否定できない人』が約1,100万人いると言われていて、併せて2,050万人もの人が現在糖尿病であったり今後なる可能性があるそうなんです。成人男性の場合、約4人に1人(27.3%)、成人女性の場合、約5人に1人(21.8%)という割合になります。辺見診療所でも200人程の方が通院治療されています。」

~そんなに多いとは驚きです。私のまわりではそんなにいないように思えるのですが・・・~

「糖尿病の初期は、痛みなどがないので自覚症状があまりありません。実はこれが、この病気のやっかいな点なんです。健康診断を定期的に受けている人の場合は、血糖値の高さで自分の状態を知る事ができますが、健康診断を受ける機会がない人の場合、糖尿病がかなり進んだ状態で病院を訪れるという危険性もあります。これは、その他の生活習慣病にも言えることですが、まずは健康診断を受けて自分の体の弱い部分を知るということが大切ですね。」

~糖尿病ってどんな病気?~

「糖尿病は血糖値が高くなる病気です。まず食べ物や飲み物を消化するとブドウ糖ができます。ブドウ糖は身体を動かすエネルギー源ですが、それは血液の流れに乗って身体の細胞に運ばれて、筋肉や臓器で使われます。血糖値とは血液中にそのブドウ糖がどれくらいあるのかを示す値で、糖尿病になるとブドウ糖がエネルギーを必要としている細胞の中に運ばれなくなって血液の中に溢れてしまうんです。なぜそんな状態になるのかというと、すい臓で作られるインスリンというホルモンが足りなくなったり、うまく細胞に作用しなくなってしまうからなんですね。インスリンは身体の中で唯一血糖を下げるホルモンでして、食後に血糖が上がらないよう調整する働きがあります。それから、血液中のブドウ糖を身体の細胞に送り込んで活動エネルギーに変えたり、脂肪やグリコーゲンというものに変えてエネルギーとして蓄えておくようにする働きもあります。つまり、インスリンが不足したりうまく作用しないとブドウ糖が細胞に取り込まれなくなって血液中のブドウ糖が使えなくなってしまい、結果的に血糖値が上がってしまいます。そして、筋肉や内臓にエネルギーが運ばれないから全身のエネルギーが足りなくなってしまうことになります。なんとなく、身体がだるいなぁと感じることが多い時は少し注意した方がいいかもしれません。

~太っている人は糖尿病である可能性が高いのですか?~

そうとは限りません。辺見診療所で糖尿病の治療されている方の多くは標準的な体型をされています。
糖尿病は大きく分けて4つに分類されます。①1型糖尿病、②2型糖尿病、③遺伝子の異常や他の病気が原因となるもの、④妊娠糖尿病の4つです。この4つの中で最も多いのが2型糖尿病です。2型糖尿病は、すい臓から出るインスリンの量が少なくなって起こるものと、肝臓や筋肉などの細胞が、インスリン作用をあまり感じなくなっておこるものがあります。食事の欧米化(肉中心の食生活)や運動不足などといった生活習慣が関係している場合が多くて、日本の糖尿病の95%以上が2型糖尿病となります。それから、年齢的にも40歳以上の人の罹患率が高いですね。
また、糖尿病を治療せずに放っておくと、とても怖い合併症を引き起こす可能性があります。糖尿病腎症になると人工透析もしなければなりませんし、糖尿病網膜症になりますと白内障になったり、ひどい場合は失明の可能性も出てきます。そして、糖尿病神経障害になると、手足がしびれ、けがや火傷の痛みに気付かなくなるのでその部分から壊疽が始まり結果、脚や腕などを切断する危険性が高まります。実際、合併症が始まって慌てて病院に来る方もいて、その時はこちらも本当につらい気持ちになります。治療をしていた人が途中で辞めてしまって、数か月後に合併症を引き起こしたというケースもありました。

~自分でできる対策はありますか?~

糖尿病はどんな人でもかかる可能性のある病気です。まずは、飲み過ぎ食べ過ぎに注意しましょう。それから肉中心の食生活から野菜中心の食生活にしましょう。狩猟民族であった欧米人に比べ、農耕民族であるアジア人は元々インスリンの分泌量が少ないんです。だから、野菜中心の食生活が日本人には合ってるんですね。そして、1日30分程度のウォーキングで構わないので適度な運動をやりましょう。これからの季節は野山を眺めながら歩くととても気持ちがいいもんですよ。
最後にもう一つ。これは若者に多いんですが、これから暑い時期になりますと特に水代わりに炭酸飲料などのソフトドリンクを飲むという人がいます。少し位なら問題ないですが毎日2ℓ近く飲む人もいるんです。これは、ペットボトル症候群(ソフトドリンクケトアシドーシス)と言われる急性の糖尿病を引き起こす可能性があります。いつも飲んでいるものにどれくらいの糖分が含まれているのかを知る事も大切だと思います。」

~地域医療の役割とは?~

「常日頃、患者さんとのコミュニケーションが大切だなと感じます。誠意をもって患者さんの話を聞いていると、だんだん心を開いてくれます。患者さんとはいろんな話をしますよ。食生活や趣味のことそしてご家族のお話を聞かせてもらう機会もあります。糖尿病は食生活に大きく関わりますから、ご家族で糖尿病の方が出ると他の方も糖尿病になる可能性が高くなります。地域医療の役割は治療だけではなく、予防にもあると思っています。かかりつけの病院があるって安心だなと思ってもらえればこんなにうれしいことはありません。所長の三井先生もとても優しく患者さんの信頼もとても篤い方です。これからも地域のみなさんと共に歩んでいきたいと思います。」

  • 三井先生と續木看護師

  • 診療所近くから見える八ヶ岳

  • 辺見診療所

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