寄り処カフェ・R&L
リングリンクホールは毎月第2・第4水曜日に限りカフェになります。取材当日は4月の終わりだと言うのにまだまだ暖炉が必要な寒い日。
それでも、このカフェの日を待ちわびていたかのように次々とお客様がやってきます。殆どの人がご近所のお友達ですが、中には節子さんやカフェに集まる方々とお話がしたくて遠くからやって来る方もいます。
節子さんのお家のリビングに遊びに来たと思わず錯覚してしまう不思議な空間だなと思っていると、一人のお客様がおもむろにハッピーバースデイトゥーユーの演奏を始めます。そしてケーキが運ばれてきました。
「今日は、4月生まれのお友達のサプライズパーティーなの。」とチャーミングな笑顔を見せる節子さん。みんなで合唱会となりましたが、なかなかギター伴奏と歌のリズムが合いません。それでも、和気あいあいとした空気が流れる素敵なひとときでした。
ここにいる方々は昔から原村に住む方、移住して来た方と様々ですがそこに垣根はありません。その垣根を無くしているのは節子さんの笑顔と原村に住む人達の温かさなのかもしれません。
その光景を見ていると幼い頃、当たり前の様に広がっていた人の集まりが心をよぎりました。
何かに引き寄せられるかの様に色んな大人や子どもが集まっていて家族の様にくつろぐ近所の人達。忘れ去られてしまっている人と人との繋がりがそこには広がっていたのです。
コミュニティがうまれる場所
実は節子さん8年程前に移住をしてきた方で元々は根っからの都会っ子でした。
しかし両親の介護と仕事の転機をきっかけに移住を決断。
人との繋がりの作れる環境を条件に考えた結果原村に決めたのです。
移住を考えるにあたって、最初は別荘地や他の土地も候補に考えていたそうですが…
「自然も好きだけど、人が集まる場所に住みたかったの。それを考えた時に別荘地よりもペンションのような所が自分にあってるんじゃないかと思ってたの。それでその当時たまたま行った御柱祭りの時に友人から、『節子さんは信州があってるんじゃない?”』って言われて。」
そんな時、原村のペンションが売りに出てるっていう情報が耳に入り、この場所にご両親といっしょに住みたいと思い決断したそうです。
「ここに集まってくる人たちは自分の価値観をしっかり持っていて、お金にこだわらない、お金より大事なものがあることを知っている人達なの。そういう人達が八ヶ岳に集まってくる。それが八ヶ岳という場所なのよ。」
笑顔でたくさんの人に囲まれる節子さんを見て、もしかして節子さんが原村を選んだのではなく、原村が節子さんを呼び寄せたのではないかと不思議な縁と力を感じずにはいられません。
節子さんの夢はいつかここで笑い合える人達と本当の家族の様に毎日を暮らしていける“家”…グループホームを作ることだそうです。豊かな自然の中で仲間たちとゆるやかにつながって笑顔がたえない“家”。ここでの温かな風景を見ていると実現するのは、そう遠い未来のことではない様に思えました。
ある中高年の雑誌が「小林節子さんと友達に会う旅」を企画し、お手伝いをすることになったそうです。ここに移住というのではなく、これがきっかけで、原村に遊びに来て下さる、原村に休みに来て下さる方が増えるといいなと節子さんは思います。原村の美しい自然と魅力的な人達を少しでも多くの人に伝えたい、こんな特別な思いが詰まった素敵なツアーになりそうです。
不安を解消するつながり
豊かな自然に囲まれながら、気の合う仲間達とゆるやか時間を過ごす。
定年退職後、こんなことを想い描きながら田舎暮らしを始めようと考えている方も多いかもしれません。
しかし、現実には問題点もあります。
それは、「車の運転ができなくなったらどうなるの?」と言うことです。もし車の運転ができなくなったら何キロも歩かなければ買い物すらできません。
もし大雪が降ったなら、道が凍る前の雪かきが大変です。
もし年老いて食事を作れなくなったら、どうすれば良いのでしょう・・・。
これが楽園の真実で、行政を含め様々なサービスはあるけれども、都会に比べると圧倒的に過酷で不便な場所であることは間違いありません。
「都会に住もうが、田舎に住もうが最終的には人とのつながりが一番大切だし、今まで出会った人との縁が私の宝物です。」時には不便な田舎暮らしだからこそ、隣近所で助け合うコミニュニティが必要だと節子さんは肌で感じているそうです。
変わらないことに価値がある
「原村にはこれ以上大きくなって欲しくないの。自然を破壊せず小さな子どもから年配の方まで伸び伸びと自然のエネルギーを利用し、自然と共に生きて行くには今くらいの人口でやっていくのが調度いいし、村長にむけて意見がダイレクトに伝わる環境も原村の良さじゃないかしら。こういったスタイルが見本として確立していけば、他の市町村にもきっといい影響が生まれると思うの。」
原村の小学校の子ども達とのコミュニケーションを通じて、節子さんが痛感したのは、この様な環境の中で優しい大人に包まれてなんと幸せなことだろうということだと言います。
「子供達の中にはここよりも都会的なところに憧れを抱き、そこを生活の場とする人たちもいるでしょう。そして、世間の荒波に揉まれて、やっぱり故郷に戻ろうと考える人たちもいると思います。そんな時、故郷が変わっているのを見たらどうかしら?きっと悲しむわ。それを変える事なく、この環境を守っていくのがここにいる私たちの役目だと感じるの。」
だんだんと希薄になりつつある人と人の絆の大切さと、そしてこれからの未来を紡ぐ子ども達の将来に向けた節子さんの温かい目線の先には、これからの原村と住人達の未来が見えているのが力強く感じられました。
節子さんからの大切な言葉
「今が幸せならすべての過去に感謝できる。だから今を幸せに生きなきゃと思う。」
自分の全ての過去を肯定することはとても難しいことかもしれません。人生には楽しかった事、感動した事、充実感を持てた事など良い事ばかりではなく、つらかった事、悲しかった事、何故自分ばかりがこんな目にと思う事もあります。でも、全ての過去が積み重なった上に、今の自分がいるのです。色んな経験を積んだ自分を肯定することによって、今の幸せが見えてくるのかもしれませんね。
リングリンクホールでは、第2、第4水曜日のオープンカフェの他、クラッシックやジャズなどの音楽イベント、フリーマーケット、農産物の販売など楽しい出会いがたくさんあります。また、6月からは第3水曜日には歌声喫茶もやるそうです。興味のある方は是非遊びに行ってみてください。また、貸しホールでもありますので、何かイベントをやりたい方は、節子さんに気軽にご相談ください。